心房細動からの脳梗塞予防に抗凝固薬を服用される患者さんへ

心房細動からの脳梗塞予防のためには抗凝固薬が用いられます。

抗凝固薬の開始には、年齢、合併症(心不全、高血圧、糖尿病)の有無、過去の脳卒中の有無などで総合的に専門医が判断します。もし、心房細動と言われたことが有るのに、抗凝固薬が開始されていない場合は、主治医または専門医にご相談ください。

心房細動ってどんな病気?

心房細動とは不整脈の1つで、心臓内の電気信号の乱れで「心房」部分がプルプルと不規則に振るえ、心臓本来の正しい収縮と拡張ができなくなった状態です。この電気信号の異常は心電図で確認することができます。

監修:九州医療センター 矢坂正弘

心房細動が起こる原因

心房細動は、心臓の病気や生活習慣、生活環境の乱れが原因で起こります。

また、加齢や他の病気(高血圧、糖尿病、甲状腺機能亢進症など)の合併など、さまざまな原因が考えられます。

心房細動は脳梗塞の原因です

Q1.どうして脳梗塞の原因なの?

A1.心房細動が続くと心臓から血液がうまく拍出されず、心房内で血液がうっ滞して血のかたまり(血栓)ができやすくなります。この血栓が脳に運ばれ脳の太い血管を詰まらせると、脳梗塞が起こります。

Q2.脳梗塞は危ないの?

A2.心房細動が原因の脳梗塞は、血栓が脳の太い動脈を詰まらせるため脳の広い範囲が障害を受け、ひどい時には死に至ります。

また一命をとりとめても重度の障害が残ったり、寝たきりになることがあります。

とくに、こんな心房細動患者さんでは脳梗塞が起こりやすくなります。

  • 高齢(75歳以上)
  • 高血圧
  • 心不全
  • 糖尿病
  • 脳卒中(脳出血、脳梗塞)の既往

心房細動患者さんは、脳梗塞を予防するために、抗凝固療法を行う必要があります

心房細動は脳梗塞の原因になるため、高血圧や糖尿病などの基礎疾患や心房細動自体の治療のほかに、抗凝固薬を用いて脳梗塞を予防するための治療も行う必要があります。

抗凝固薬は、血が固まりやすくなっている状態を改善し、血栓ができるのを防ぎます。

心房細動患者さんは心房内で血栓ができやすく、脳梗塞が起こりやすい状態にありますが、脳梗塞を予防するためには、抗凝固薬をきちんと服用することが重要になります。

抗凝固薬には「ビタミンK拮抗薬(ワーファリン)」と「ダビガトラン(プラザキサ)」などがあります。どちらも心房細動が原因で起こる脳梗塞の予防に対して有効な薬です。ただし、それぞれ特徴が異なるため、その特徴をしっかり理解したうえで、服用を継続することが大切です。

抗凝固薬について

  • 心房細動からの脳梗塞予防のためには抗凝固薬が用いられます。
    抗凝固薬の開始には、年齢、合併症(心不全、高血圧、糖尿病)の有無、過去の脳卒中の有無などで総合的に専門医が判断します。もし、心房細動と言われたことが有るのに、抗凝固薬が開始されていない場合は、主治医または専門医にご相談ください。
  • 抗凝固薬には、古くからビタミンK拮抗薬ワーファリンが用いられてきましたが、近年その短所を補った薬剤の発売・開発が盛んです。2011年にはダビガトラン(プラザキサ)が発売されました。2012年以降もいくつかの薬剤が発売される予定ですが、このホームページは現時点で国内で使用実績の多い、ワーファリンとダビガトランについて紹介しています。今後、新薬についても随時追加していく予定です。

更に詳しくは、「ワーファリンについて」や「プラザキサについて」をご覧ください。

ワーファリン プラザキサ
主な違い:飲む量は定期的な採血結果で決める。
原則1日1回
主な違い:飲む量は概ね一定。
原則1日2回

抗凝固薬(ワーファリンやプラザキサ)服用中に特に気をつけてほしいこと

1)服用時の注意点

必ず医師の指示に従って服用し、ご自分の判断で飲むのを止めたり、薬の量や回数を変更したりしないでください。
飲み忘れた場合であっても、決して2回分をまとめて一度に飲まないでください。
Aワーファリンを飲み忘れた場合
Bプラザキサを飲み忘れた場合
誤って多く飲んだ場合は、すぐに主治医に相談してください。

Aワーファリンを飲み忘れた場合

ワーファリンについて

ワーファリン錠は、心房細動だけではなく、深部静脈血栓症、人口弁手術後、心筋梗塞後など心臓・血管内に血栓という血の塊ができやすい状態の時に血栓を予防する目的で1日1回服用するお薬です。

血栓は血小板という血球成分(その他の血球成分には赤血球、白血球などがあります)と肝臓で作られる凝固因子というたんぱく質が一緒になって作られます。この凝固因子の一部は食物などに含まれているビタミンKの助けを借りて作られます。ワーファリンはこれらの凝固因子が肝臓で作られる量を減らすことで血栓を予防します。

よって、ビタミンKを多く含む食べ物を摂取するとワーファリンの効果が弱くなります。


ワーファリンを飲み忘れたら?

服用を忘れたことに気付いたら、できるだけ早く服用してください。

【翌日まで気付かなかった場合】

忘れた分は抜き、その日の分だけを指示通りに服用してください。

監修:佐賀大学神経内科 薬師寺 祐介

Bプラザキサを飲み忘れた場合

プラザキサについて:

ワーファリンと異なり、高度の心臓弁膜症を有さない心房細動の患者さんに限って使用されます。

薬剤の効果時間が比較的短く、飲み忘れにはより注意が必要です。

プラザキサは血を固まりにくくすることで、血のかたまり(血栓)ができるのを抑える薬です。

プラザキサの特徴:

  • 1日2回服用するカプセル剤です。
  • 医師に指示された量を飲みます。
  • 納豆や青汁などのビタミンKを多く含む食事の制限はありません。

用法・用量:


プラザキサはコップ1杯の水またはぬるま湯と一緒に飲んでください。
プラザキサは吸湿性のある薬なので、飲む直前にPTPシートからとりだしてカプセルのまま飲んでください。
*PTPシートのまま飲んだり、カプセルを開けて内容物だけを飲んではいけません。
プラザキサを飲み忘れたら? 飲み忘れた場合であっても、決して2回分をまとめて一度に飲まないでください。