心房細動は高齢者に多く見られる不整脈で、国内患者数は少なくとも約80万人と推定されています※1。
心房細動がある人は、ない人に比べて約5倍も脳梗塞(血管が詰まるタイプの脳卒中)になりやすいといわれています※2。
また死亡率や、寝たきりなど介護が必要な重度の後遺症が残る可能性も高く※3、患者本人や介護する家族の負担、そして社会・経済的負担が非常に大きくなります。
心房細動による脳卒中は、適切な治療(抗凝固療法)により約6割が予防できます※4。したがって、心房細動を早期に発見し、適切な抗凝固療法(適切な薬を適切な量、内服する)を行うことが大変重要です。
しかし心房細動は、その症状や脳梗塞予防の必要性について十分に知られていないために、心房細動を疑わなかったり、疑っても受診しない、また自覚症状のない心房細動や、短時間で症状が消失する「発作性心房細動」は発見が困難といった理由から、心房細動の早期発見は容易ではありません。
また抗凝固療法についても、残念ながら現状では、適切な抗凝固療法を受けている心房細動患者は全体の半数程度とも言われる※5
など、治療の課題も指摘されています。
このような背景を踏まえ、日本脳卒中協会とバイエル薬品は「心房細動による脳卒中を予防するプロジェクト」(TASK AF: Take Action for StroKe prevention in AF)を開始します。
本プロジェクトでは、心房細動の早期発見と適切な治療に、自治体・保険者・医療提供者等が一体となって取り組むことで、より効果的に脳卒中を予防することを推進します。
本プロジェクト実行委員会は、このような具体的な取り組みの提案を、提言書「脳卒中予防への提言―心原性脳塞栓症の制圧を目指すために―」にまとめました。
さらに今後、提言内容の一部をモデル事業として実際に行い、その効果を評価・周知していくことで、本提言内容がより多くの地域で実行され、わが国におけるより効果的な脳卒中の予防につながることを期待しています。
「心房細動による脳卒中を予防するプロジェクト」
実行委員会
委員長 山口 武典
このプロジェクトは、脳卒中患者とその家族の負担、および国の社会経済的な負担を軽減することを目的とします。そのために、心房細動患者の脳卒中予防に関する現状および課題を明らかにし、行政・保険者・医療提供者の効果的な連携を促進します。
行政・保険者・医療提供者が協力して、心房細動がもたらす脳卒中のリスクと適切な抗凝固療法を継続することの重要性を周知することによって、関係者の意識や行動の変化をもたらし、次の目標の達成を図ります。
① 心房細動の早期発見
② 心房細動に対する適切な脳梗塞予防(抗凝固療法の受療・継続、アブレーションなど)