脳卒中市民シンポジウム
座長

後遺症を最小にするための日頃の心得

脳卒中の後遺症は
かかりつけ医に相談

草津栗東医師会理事

坂井 伸好氏

林健氏

 脳卒中は2割が全快、2割が死亡、6割に後遺症が残ります。65歳以上の寝たきりの原因の第1位で、発症後10年以内に約半数が再発することから、再発予防や後遺症軽減が重要です。 禁煙、適度な運動、十分な水分摂取など生活習慣を改善し、高血圧、糖尿病、脂質異常症などは可能な限りコントロールします。症状がないからと、薬を勝手にやめてはいけません。最近は頸動脈ステント留置術などの血管内治療やバイパス術などさまざまな選択肢があるので、医師と相談のうえ納得のいく治療を受けてください。
 後遺症の軽減にリハビリは重要です。積極的に取り組める環境作りや家族の励ましなど、周囲の協力が大切でしょう。脳卒中の後遺症はどの科を受診すればよいのか迷うかもしれませんが、ぜひ家の近くでかかりつけ医を持ってください。通いやすく、1日に複数の診療科を回る必要もありません。ささいな相談にも親身に対応できます。脳卒中の再発を疑う時は、かかりつけ医を受診し、症状によってはすぐ救急車を呼びましょう。

社会復帰のためのリハビリ

人生の目的を持ち
積極的に社会に出る

滋賀県立成人病センター リハビリテーション科

中馬 孝容氏

丸木雄一氏

 脳卒中の急性期の早期からリハビリを行い、筋力低下や関節が固くなる廃用症候群を防ぎます。全身状態が落ち着くと、リハビリ専門病院でまひや言葉の改善などADL(日常生活動作)の向上をめざす回復期を過ごします。そして自宅や地域に戻る生活期(維持期)は、医療、保険、福祉などに関わる多彩な人が協力して地域リハビリを行います。社会復帰の要因は、ADL能力、体力や作業耐久性、移動能力があることです。職場復帰には配置転換や障害者雇用もあり、職場の理解や外来のフォローも必要です。
 リハビリ中は、スケジュール管理も含め身の回りのことは自分で行いましょう。適切な運動で体力を維持・向上できるように努めましょう。人生の目標やチャレンジ精神も大切です。「まひだから何もできない」のではなく、例えば散歩コースの喫茶店に通うことで、お店はその人が座りやすい椅子を用意してくれるかもしれません。患者さんが積極的に外に出ることで、社会全体に影響を与えられると思います。

いつまでもやる気を保つために

心の後遺症を治療して
新しい人生を歩く

滋賀医科大学脳神経外科

椎野 顕彦氏

鈴木英二氏

 リハビリで体の症状が改善しても、精神的に良くなるとは限りません。脳卒中の後遺症として、約3分の1が経験するのがPSD(脳卒中後のうつ病)です。絶望や自己批判、希死念慮(死にたくなる気持ち)などが症状として表れます。最近の研究では、PSD患者にリハビリを推進すると、ADLの回復遅延、認知機能の悪化、死亡率の増加がみられました。また、PSDのような沈んだ感情、病識がなく、意欲低下、周囲への無関心などが症状のアパシーという病気もあります。治療法としてPSDは休養や気分転換、アパシーは行動療法や活動療法が主体で、内服薬も異なります。リハビリと並行して適切な治療を受けながら、社会復帰をめざしましょう。
 脳卒中のリハビリを前向きに継続するには、単に頑張るのではなく、その目標を定めるなどマインドセット(思考様式)が大切です。社会的孤立を防ぐため、積極的に交友関係を構築する、新しい人生を歩くといった考え方の転換をはかってください。

私はこうして職場に復帰した

入院翌日からリハビリ
通勤に大変な苦労

厚生労働省委託事業 「治療と職業生活の両立等支援事業」 日本脳卒中協会担当委員

川勝 弘之氏

丸木親氏

 48歳の時、脳梗塞を発症しました。朝、ベッドから起きようとして左の手足に力が入らず倒れ、救急車で1時間以内に病院に着きましたが、当時はt-PA療法がまだ認可されておらず、抗凝固療法や抗脳浮腫療法などを受けました。入院翌日からリハビリを始め、まひした部位で同じ動作を繰り返しました。発症前も定期的に人間ドックを受診し、高血圧を指摘されていましたが、特に対処しないままだったのが、発症の引き金の一つになったのかなと感じます。復職後、大変だったのが通勤です。通勤電車では座るため始発駅まで戻って乗るので長時間かかっていますが、この社会生活自体がリハビリになりました。現在は3カ月に1度通院し、降圧剤や抗血小板剤を服用しています。脳卒中は予防が第一ですが、発症時の対処法を考えておくことも大切です。脳梗塞の発症場所は、自宅が8割。家族間で気をつければ、より早く症状に気づき、良い治療にたどり着けます。ぜひ、本日の内容を家庭や勤務先で広げてください。それが脳卒中の減少につながります。