第14回 脳卒中市民シンポジウム
座長

自分と家族、皆の健康のため強い意志で禁煙しよう

あの日変わった私の人生

NPO法人 脳卒中友の会 すずらん会

児玉 隆 氏

児玉隆氏

  私は22歳でタバコを吸い始め、会社の接待、マージャン、酒の席など常にタバコを離しませんでした。家では、カーテンを洗濯すると水が茶色になると妻に言われ、食器でタバコを消し叱られる始末。そして40歳のとき、突然脳梗塞に。昨日まで自由に動いた体が、目覚めたら動きません。左半身まひと言語障害になりましたが、当初病気の知識はなく、自分の身に何が起こったのかわかりませんでした。これからの生活を考えると、目の前が真っ暗になり悲嘆にくれました。
 リハビリを開始した際も、動かない手足を曲げたり伸ばしたりするのはとてもつらく、あまりの痛さにもうやめようという気にもなりました。でも家族のことを思い出し、また熱心に治療してくださる先生に申し訳ない気持ちで、何とか頑張りました。すると少しずつ手足が動くようになったのです。多くの人の支えのおかげで、体のまひは残りましたが、健康に暮らせている現在に感謝しています。
 私はこの経験から、二度とタバコを吸わないと決心しました。今、喫煙している人は、自分と家族、周りの人の健康のため、強い気持ちで禁煙しましょう。自分の体をはってまで、高いたばこ税を払う必要はありません。最後にもう一度繰り返しますが、必ずタバコをやめてください。

脳卒中など多くの病気のリスクを高めるタバコ

「キツエン」から「キンエン」へ

たかの呼吸器科内科クリニック 院長

髙野 義久 氏

高野義久氏

 タバコの煙には4千種以上の化学物質が含まれ、うち60種類は発がん物質です。喫煙者の脳卒中のリスクは、全体で非喫煙者の約1.5倍、脳梗塞では約1.9倍、くも膜下出血では3倍近くです。他にもがん、胃潰瘍(かいよう)、糖尿病、循環器疾患など多くの病気が喫煙に関連します。また、喫煙者は非喫煙者より寿命が短く、寝たきり期間が長いといわれています。
 禁煙すると、脳卒中や心臓病の発症率は徐々に下がり、5年で非喫煙者と同レベルまで下がります。肺がんはこれより長く10〜20年です。
 タバコの煙は喫煙者だけでなく、周りの人の健康にも影響を与えます。受動喫煙が原因の病気で死亡する成人は、日本で1年間に6800人に上ります。公共の場の全面禁煙により、心血管疾患などの発症が明らかに減ったデータもあり、病気を減らす効果が高いといえます。タバコ規制政策を国際比較すると、日本は最下位レベル。熊本県は学校の敷地内禁煙化率が全国最低レベルです。今後本県に禁煙環境を広げていかねばなりません。
 禁煙は自分の体を守り、受動喫煙を防止し家族も守ります。子どもの喫煙開始は、両親をはじめ周囲の大人が吸わないことで予防できます。禁煙して後悔した人はいません。ぜひ禁煙を。難しい場合は禁煙外来を受診ください。

脳卒中予防の鍵は毎日の体重管理と減塩

ちょっと減らそう 塩とエネルギー摂取

熊本市民病院 栄養管理室 主任

園田 亮子 氏

園田亮子氏

 脳卒中の危険因子である高血圧と肥満を併せ持つ人は、減量により約8割が高血圧を改善できます。摂取カロリーや運動による消費エネルギーをコントロールして、肥満を予防・改善しましょう。理想体重は「体重(キロ)÷身長(メートル)÷身長(メートル)が22となる体重と覚えてください。食べ過ぎを防ぐには、ゆっくりよくかむこと。野菜は低カロリーのうえビタミン、ミネラル、食物繊維を豊富に含むので積極的に取りましょう。
 また、塩分の取り過ぎも高血圧を招きます。日本人の1日の塩分摂取量の目標値は、男性9グラム未満、女性7.5グラム未満です。実際の摂取量は男女ともこれを上回り、高血圧の減塩目標は6グラム未満です。減塩にはまず薄味に慣れること。レモンなどの酸味、ワサビなどの香辛料を使うとおいしく食べられます。漬物や汁物、練り製品や加工食品は高塩分なので控えましょう。また、体内の余分な塩分を排泄するカリウムを含む野菜や果物、高血圧を予防するカルシウムを含む乳製品や大豆製品、血液の循環を良くするEPA(不飽和脂肪酸)を含む青魚をしっかり食べましょう。
 栄養バランス良く1日3食規則正しく食べることは、全ての疾病予防につながります。体重管理と減塩を心がけ、健康寿命を延ばしましょう。

正しい薬物療法が脳卒中のリスクを減らす

お薬は 勝手に止めずに 相談を!

済生会熊本病院脳卒中センター 神経内科 部長

米原 敏郎 氏

米原敏郎氏

 昨年、当院に脳梗塞で入院した約700人のうち、症状が軽く自宅退院した人は32%で、その他の大部分は転院されました。多くの人に後遺症が残ることを考えると、やはり予防が大事です。ここでは、脳卒中の危険因子となる病気の薬物療法を紹介します。
 第一に高血圧。血圧が高いほど脳卒中の危険性は高まりますが、降圧療法で血圧が下がると、危険性は約4割低下します。第二に糖尿病。全身の血管に動脈硬化を引き起こすため、糖尿病の人はそうでない人に比べて脳卒中の危険性は3倍以上です。医師の指導のもと血糖値をコントロールしてください。第三に不整脈。特に心房細動のある人はない人に比べて、脳梗塞の危険性が男性は5倍、女性は3倍高くなります。抗凝固薬の内服で発症を約7割抑えられるので、脈の乱れを感じたら医師に相談しましょう。第4にコレステロール。悪玉コレステロール(LDLーC)値が高いと脳梗塞の危険性が高まり、善玉コレステロール(HDLーC)値が低いと脳卒中の危険性が高まります。
 また、脳梗塞の再発予防薬である抗血小板薬や抗凝固薬も正しく服用してください。薬の中断や変更は、再発に影響を与えることがあります。薬物療法は、たとえ自覚症状がなくても続けることが大切です。