第13回 脳卒中市民シンポジウム
座長

富山県の脳卒中に対するとり組み

宮本哲也氏

医療・行政・医師が連携し情報を共有

宮本 哲也 氏 富山県厚生部次長

 富山県には医療機関、行政、医師会が患者さんの情報を共有する脳卒中情報システムがあり、このデータを参考に総合的な脳卒中対策にとり組んでいます。予防対策としては、生活習慣病の改善を基本に、食育や、メタボリックシンドローム予防活動、高齢者の介護予防活動などにより、生涯を通じた健康づくりを支援しています。また、急性期の迅速な治療、リハビリや在宅医療を行う各機関・施設が連携し、継続的なサービスを提供できる医療体制も整備しています。富山県の特色として、08年からは在宅医療に着目し、患者さんを複数の診療所で24時間診るとり組みを全県下で進めています。また、リハビリテーション支援センターと県内6カ所のリハビリテーション広域支援センターが連携し、リハビリの相談に応じるほか、専門スタッフの研修などを行い、地域でのリハビリの活性化を図っています。

富山市保健所の脳卒中に対するとり組み

脳卒中地域連携パスで医療機関が連携

瀧波賢治氏

瀧波 賢治 氏 富山市保健所保健予防課長

 富山市の脳卒中総合対策事業は、予防の血圧対策、地域リハビリの推進、正しい知識の提供など多彩です。後遺症のある人の引きこもりを防ぐ脳卒中患者社会参加教室では、健康講座やお出かけ企画などを数多く実施。終了後は、OB会の自主的な活動につながっています。脳卒中をテーマにした健康教室も頻繁に開催し、保健師による寸劇などわかりやすい情報提供に努めました。また、発症から急性期医療、回復期リハビリ、維持期の介護保険サービスをつなぐ脳卒中地域連携パスの推進も重要なとり組みです。パスは各時期での医療関係者が患者の回復状況を記載し、きれめのない医療などを実施するためのツールです。ツールに加え、医療機関が顔の見える情報交換を行う地域連携の会を年3回開催しています。今後も、中立的な立場から各医療機関の連携を図っていきます。

脳卒中後の「うつ」と「ぼけ」予防

高嶋修太郎氏

励まさず、笑顔で接して

高嶋 修太郎 氏 富山大学附属病院神経内科診療教授

 脳卒中が原因で起こる脳血管性認知症の特徴は、まだら認知症です。脳血管障害を起こした部位の機能が低下するため、計算だけできない、言葉だけ苦手になるなど症状は「まだら」です。脳卒中を発症する度に、段階的に認知機能障害が悪化するので、再発予防が重要です。脳血管性認知症の治療は難しく介護が中心ですが、介護者は患者さんの人格を尊重する気持ちを持つことが大切です。また、脳卒中後のうつには、脳卒中自体を原因とする血管性うつ病がありますが、片まひなど後遺症のショックから起こるケースが多く見られます。うつの発症は、治療やリハビリテーションの意欲を低下させ、病態を悪化させ長引かせます。脳卒中の再発率を高めるというデータもあります。治療は薬物療法とともに精神的休息が必要ですが、励ましや気晴らしは逆効果。「頑張れ」ではなく、「一緒にやろう」と笑顔で接するよう心がけてください。

脳卒中後の回復期リハビリテーション

野村忠雄氏

意欲と自信、家族の愛情が大切

野村 忠雄 氏 富山県高志リハビリテーション病院院長

 脳卒中の発症直後の急性期と、退院して自宅に戻る生活期(維持期)の間が回復期で、一般に発症後1〜2カ月から6カ月後までを指します。リハビリ病棟での回復期リハビリは、寝たきり予防と自宅復帰が最大の目的です。理学療法士、作業療法士、言語聴覚士、臨床心理士、ソーシャルワーカーら専門スタッフのサポートで、まひの回復を促し、生活動作を訓練し、自宅へ戻る準備をします。訓練士による機能訓練は1日1時間半から3時間程度ですが、病棟での生活そのものがリハビリと思ってください。また脳卒中で動けなくなると、誰もが落ち込むものです。運動やレジャーはうつの発症を減少させるため、富山県高志リハビリテーション病院ではレクリエーションが盛んです。回復期リハビリで大事なのは、本人の生きる意欲と自信。家族は激励ではなく、さりげなく優しく言葉がけを。家族の愛情が一番の薬です。

地域における寝たきり予防と「ぼけ」予防のとり組み

南眞司氏

適切な支援と地域の理解を推進

南 眞司 氏 南砺市民病院院長

 南砺(なんと)市は、65歳以上が約31%と高齢化率の高い地域です。南砺市民病院で長年地域医療に携わって感じるのは、家庭や地域に貢献してきた高齢者を不幸にしてはならないし、支える家族も犠牲にしてはならないということ。医療や介護の専門職チームが適切に支援し、地域の理解があれば、家族の負担は減りきずなや思いやりを育みます。病気の診断・治療とともに、生活の質を守り、どんな病気や障害でも最期まで安心して暮らせる地域づくりこそ、南砺市民病院の役割です。脳卒中に対しては、予防と早期発見、急性期治療や回復期リハビリの体制づくり、患者会活動などの在宅支援にとり組んでいます。認知症では、早期発見を促す「もの忘れ外来」設立、診療機能向上、本人や介護者の支援活動などを推進。ボランティアによるコント、認知症サポーター養成講座など地域住民への啓発活動も盛んです。