第1部 特別講演「脳卒中治療の最先端医療」
講演2「薬で治す脳卒中」
例えば釣りをしている時に右手に力が入らなくなった。でもブラブラ手を振っていたらよくなり、気のせいだということで、見過ごしてしまってはいけません。中年以降で、先ほど島本先生からお話があったような危険因子を持っている方にこのような症状が起こったら、特にTIAでないかと心配し、なるべく早く受診してください。症状としては、突然、体の左右どちらかに力が入らない、動かせない。あるいは体の左右どちらかがしびれるとか、感覚がなくなる。視野の半分が見えなくなる。あるいは一過性黒内障と言いますが、急に片目が見えなくなる。目が見えなくなるから目の病気だと眼科を受診しますが、実はそうではない。脳卒中の前触れで、神経内科や脳外科の病気であるということです。それから、ろれつが回らない、言葉が出ないという症状が出てきます。あるいは突然グルグル回るようなめまいが、他の症状を伴って出る。ここがポイントですが、TIAには「突然発症して、短時間で消失する」という特徴があります。TIAの多くは数分から数十分で自然に症状がなくなってしまいますが、このような異常を感じたら、なるべく早く医療機関を受診してください。
脳梗塞を起こして再発した場合には、後遺症が付け加わりますから重症化します。それから血管性痴呆(ちほう)という問題も出てきます。日本人高齢者の(認知症の)半分はアルツハイマー病で、半分はこの脳梗塞が原因です。両方相まって日常生活の活動範囲が狭まってくるわけです。そして寝たきりになってしまいます。この悪循環を何とか断たなくてはなりません。
山口先生が音頭を取り、全国で脳梗塞急性期医療の実態調査を初めて行い、J―MUSICという研究でわかったのですが、脳梗塞で入院した方の3割はすでに脳梗塞を起こした既往があるということです。脳梗塞を起こしたことが再発を起こす危険因子になっているということで、一度、脳梗塞を起こした方は、未然に防ぐという、先ほど、島本先生のお話にあった過程をより深刻に厳格に考える必要があると言えます。