第1部 特別講演「脳卒中治療の最先端医療」
講演2「薬で治す脳卒中」
3時間以内と言っても3時間ギリギリに入って来たのでは、ちょっと無理です。というのは、病歴を聞き既往歴を確認し、臨床検査を行い、血管のルートなどを確保し、診察を行い、神経症状の重症度も判定しなくてはなりません。それを10分以内に行い、その後、緊急CTやMRIの拡散強調画像の撮影など検査を35分で実施し、最終的に患者に説明、了解の上で治療を始めます。それに15分。非常にタイトです。できれば1時間というお話もありましたが、2時間でも足りないぐらい。なかなか厳しい治療法であることは間違いありません。しかし、きちんと適応してこの治療ができた場合は、劇的な効果が期待できるのです。
もう一つ覚えて帰っていただきたいのは、脳卒中には前触れがあるということです。一過性脳虚血発作(TIA)を見逃さないこと。これが運命の分かれ目になります。TIAとは脳の虚血による局所神経症状が突然発症して24時間以内にあとかたもなく症状が消失して、後遺症が残らないもの。これは治療しないでも一過性で良くなってしまいます。ただ、最近のアメリカの定義は1時間以内に短縮されています。TIAの多くは頸動脈の狭くなったところにできた血栓がはがれて脳に流れていくと考えられています。TIAの3割は、放っておくと将来、脳梗塞を起こすということで、重要です。しかもTIAは発症直後ほど脳梗塞へ移行しやすいのです。昨日起こったTIAと1年前のTIAは緊急度が違うということ。発症後1週間以内のTIAは救急疾患として扱う必要があり、TIAが疑われるなら、なるべく早く専門医を受診すべきです。そして精密検査を受け、あるいは治療する必要があります。そしてTIAと診断され抗血小板薬、例えばアスピリンのような薬を飲めば、脳卒中にならないで済むわけです。