第1部 特別講演「脳卒中治療の最先端医療」
講演1「脳卒中にならないために」
肥満が一番悪さをする病気は何か。それは糖尿病です。肥満だと糖尿病になりやすいのは十分ご存じかと思います。糖尿病こそ最も典型的な生活習慣病だと言えます。なぜかと言いますと、この50年間で50倍に増えたからです。1955年を1倍とすると、20年で10倍、30年で30倍、50年で50倍に増えたということは、遺伝子が変わることはあり得ないのですから、変わったのは唯一、生活習慣です。すなわち車社会、運動不足、肥満、ストレスの増加、食事の欧米化、このように生活習慣が変わったために増えたと言えます。
50倍という数字はすごい数字です。糖尿病の患者さんが今、100人いるとします。50年前は2人しかいなかった。98人の方は糖尿病ではなかった。食事を50年前に戻すことができて、生活習慣も戻すことができたなら、糖尿病は100人の方のうち98人はなくなるのです。生活習慣を戻すことは不可能ですが、努力はできる。50倍に増えたという数字の重さを十分にご理解していただければと思います。
糖尿病は何が怖いのかと言うと、血管病だからです。血糖が高いだけでなく、インスリンが高い、脂肪も増える、血圧も高い、肥満もある、尿酸も高い、いろいろな動脈硬化の危険因子が糖尿病で重なり、細い血管の障害、すなわち、網膜の血管障害で目が見えなくなる、腎臓の血管障害で透析になる、末梢(まっしょう)神経の血管障害で手足がしびれる、などの障害が出てきます。加えて、患者さんにとってつらい心筋梗塞、脳卒中、閉塞性動脈硬化症などの太い血管の障害もおこります。症状として、病気として現れてくるのは、全部血管の病気ですから、糖尿病は血管病と言ってよいということになります。足の血管が詰まると、腐っていきます。これはもう足を切らなければなりません。目は網膜剥離(はくり)、出血が進むと失明につながります。