脳卒中対策の法制化に向けた取り組み

脳卒中対策基本法 Q&A

Q1 なぜ脳卒中対策のための個別法が必要なのか?

Q2 脳卒中対策として何が必要なのか?

Q3 法制化しないと実現できない脳卒中対策とは?

Q4 既存の医療法で対応できるのでは

Q5 リハビリの重要性、体制の現状と課題について

 

Q1 なぜ脳卒中対策のための個別法が必要なのか? 

A1 脳卒中とは、脳の血管が急に破れたり、詰まったりして、脳の循環に障害をきたし、様々な症状を起こす病気です。脳卒中には、血管が詰まる脳梗塞、脳内の細い血管が破れて出血する脳出血、脳動脈瘤が破れて脳表面に出血するクモ膜下出血があります。

脳卒中は我が国の死因の第3位ですが、寝たきりや要介護状態になる原因のトップ(それぞれ全体の4割と3割)を占めています。そして、高齢化に伴って脳卒中の患者さん数は明らかに増加していて、この先2020年くらいまで増え続けると予測されています。

死因としては、増え続けているがん、そして心疾患に比べ、減少している、と思われるかもしれませんが、脳卒中は、社会的負荷という観点では、寝たきりや要介護の原因として、もっとも深刻であり、しかも大きな負荷となり続けています。今後、急速に進行する高齢化社会のなかで、発症を防ぎ、後遺症に悩む人を減らすことはますます重要になってきている、と考えています。

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Q2 脳卒中対策として何が必要なのか?

A2 脳卒中のうち、6割以上を占めている脳梗塞については、これまで根本的な治療法はない、とされてきましたが、4年ほど前から、発症直後に使うと回復が期待できるtPAという治療薬が使われるようになりました。このtPAで発症から3時間以内に治療すると、障害を残さないで回復できる患者さんが1.5倍になる、といわれています。

しかし、この治療は、発症3時間以内に開始しなければなりません。したがって、病院に到着してから、検査や準備に少なくとも1時間近くはかかるので、発症後2時間以内にはこの治療が行える医療機関に着いていなければなりません。このため、残念ながら、わが国でこの治療を実際に受けることのできた患者さんはこれまでのところわずか50人にひとり程度にすぎません。

加えて、t-PA治療以外でも、脳出血への対応やくも膜下出血に対する手術も含め、脳卒中は一刻も早く専門的治療の行える医療機関を受診することで、後遺症を減らすことができます。

発症直後の効果の期待できる治療を普及するためには、市民への知識の普及と迅速的確な救急搬送体制の確立が必要です。

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Q3 法制化しないと実現できない脳卒中対策とは?

A3 市民啓発、救急搬送体制の確立、脳卒中に関する情報収集体制の整備に、法律による対応が必要です。

・市民啓発

脳卒中の症状を知り、脳卒中が疑われたら即救急車を呼ぶ、という行動がなければ、発症直後の治療はできません。

日本脳卒中協会では、市民講座や公共広告機構のご協力のもとでのキャンペーンなどを行っていますが、ボランティア活動だけで展開することには限界があります。

脳卒中対策が具体的に法律に示されることによって、公的な活動、たとえば、市政だよりや特定健診、学校教育などさまざまな機会に広報が展開される、と期待しています。

かつて「トイレで倒れても動かすな」といわれた誤った常識を覆し、24時間365日いつでも発症したらただちに専門的医療機関へ、という的確な対応が常識となり、ひとりでも後遺症を残さない人をふやすことが、脳卒中対策の法制化の大きな目的の一つです。

・3時間以内に治療開始できる救急医療の確保

脳梗塞が疑われた場合には、現場で救急隊員が判断し、ただちに超急性期のt-PA治療のできる医療機関へ搬送しなければなりません。そのためには、救急隊員が現場で判断するための知識と権限、そして、その時点で受け入れ治療可能な医療機関の情報がなければなりません。そうした体制を確立するためには、救急搬送を管轄する総務省消防庁と、医療制度を所管する厚生労働省、そして地域の医療体制を整備する自治体の責務と権限について、法的な拠り所が必要です。

・脳卒中に関する情報収集体制の整備

脳卒中患者さんの発生数や後遺症数などを調査し、地域の脳卒中対策に反映させることが不可欠ですが、現状では、個人情報保護法の制約があるために、十分に把握できません。法律を作ることによって、個人情報保護法の制約を超えて、脳卒中の発症登録や、病院の医療に関する情報と市町村が持っている介護に関する情報を結合して各地域の脳卒中患者の長期予後を把握すること、医療費と介護費を合わせた経費の調査を分析することなどを行うことが可能になります。たとえば、デンマークでは、法律で脳卒中登録が義務付けられており、インターネットを使ってスムーズに登録が行われ、脳卒中対策の実施と評価に威力を発揮しています。

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Q4 既存の医療法で対応できるのでは

A4 ご承知のように、第5次医療法改正によって、医療計画に、脳卒中についても具体的な医療連携体制を位置付けることになりました。しかしながら、脳卒中対策においては、医療の枠を超えた対策が必要で、医療法ではすべてをカバーできません。医療以前の対策として、予防や発症時対応についての情報の普及、適切な救急搬送を実現するための救急隊員の教育が重要です。また、社会福祉対策として、脳卒中後遺症患者本人と介護を担う家族の生活の質を維持し向上させる支援体制も重要です。

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Q5 リハビリの重要性、体制の現状と課題について

A5 リハビリテーションは、回復を早め、後遺症の障害を軽減する、そして、後遺症が残った場合にはそれ以上機能が低下しないようにするために行います。

ともすると、急性期には濃厚な治療と安静が必要で、慢性期になったら福祉の一環として徐々にリハビリを始める、というイメージが残っています。

しかし、脳卒中では、発症後できるだけ早くリハビリを開始し、連続して、つまり土日も含めてリハビリを行うと、回復が早まることが分かってきています。

急性期の病院で早期からベッドサイドで行うリハビリや、急性期から回復期にかけて土日も含めたリハビリを実施するには、十分な数のリハビリスタッフが不可欠です。

 さらに、回復期リハビリテーション病棟も、現在、人口10万人当たり50床必要とされていますが、いまのところ、全国平均で人口10万人当たり33床しかありません。特に、都市部では不足しているようです。

 後遺症を残して退院した患者さんの維持期の訪問リハビリは、介護保険サービスのメニューには入っています。しかし、メニューの中で最も利用率が低く、十分普及していません。その要因としては、実施する訪問看護ステーションや医療機関が少ないこと、要介護度ごとに決められた介護保険の利用上限との兼ね合いで、本当はリハビリが必要であるけれども他のメニューが選ばれてしまうこと、が挙げられます。通院でのリハビリを行う医療機関が少ないことも、患者さんから指摘されています。