−もくじ−

 □ 総論

 ■ 車椅子と歩行補助具の上手な選び方

  装具の処方の受け方

  知っておきたい制度

  住宅改造のヒント


総論

 

横浜市立大学附属市民病院
総合医療センター リハビリテーション科
安藤 徳彦
 

(1)早期リハビリテーション

 脳卒中は脳の血管の血行障害ですから、重大な身体機能障害を後に残すことが少なくありません。脳卒中の機能障害を少しでも軽く済ませるためには、発病直後から救命救急処置と併行して機能障害の発生を予防するあらゆる処置を開始することが極めて重要です。その処置には褥瘡(床ずれ)、肺炎、関節拘縮などの合併症を予防する処置を含みます。

 褥瘡は病棟で定時的(3〜4時間毎)臥床姿勢を変換すれば必ず予防できるものですし、肺炎も薬物治療だけに頼らずに誤嚥を予防し肺理学療法を行えばその効果は高く、また関節拘縮も早期に対処すれば予防は可能です。しかし発病直後の救命治療だけに意識が集中して、合併症予防にまで注意が向かないと起きてしまうことが稀ではありません。褥瘡や呼吸器合併症はリハビリテーション専門職が病棟看護婦と協力して対処すべきものです。下肢が屈曲位で関節拘縮を起こしたり、足関節が尖足位に変形拘縮を起こすと、それは歩行に対する重要な阻害因子となりますので、ベッド上で装着する装具も活用して、是非とも予防すべきものです。

 

(2)リハビリテーションとチームアプローチ

 さらに脳卒中では高次脳機能障害と呼ばれる障害も発生します。高次脳機能障害には失語症と呼ばれる言葉の障害や、左半側視空間失認と呼ばれる左側にある事物を認識できない障害や、手足を動かせるのに日常の生活行為が上手くできない失行症と呼ばれる障害を含みます。また治療が終了した後で家庭に復帰する条件を整えることは、家族にとって非常に大きな負担になります。リハビリテーションは単に手足の機能回復訓練だけを指すのではなく、全身の合併症に対する予防的処置と、それから様々の脳の高度な機能障害に対するアプローチと、社会的資源を利用する援助を行いなどの支援も含むものです。それはリハの多職種によるチームアプローチによって計画的に実施されます。リハビリテーション専門医が居ればそのチームの要の役割も果たすことができます。

 

(3)早期リハビリテーションと車椅子、装具

 合併症を予防する有効な方法は早期にベッドから離床することです。それを実現する手段として車椅子や装具があります。

 車椅子は歩けない人の移動を代償する手段として、介護を要する人にのみ使用するものと一般には思われています。しかし、車椅子は発病早期にベッドから離床する手段としても重要な役割を果たすものです。もちろん歩ける可能性のある人まで車椅子に放置して歩けなくなる要因を作ってしまうのは論外ですし、まだ体幹を直立に保つ機能が低い時期に猫背で長時間座ったままで放置すると、悪い姿勢が固定して後に起立歩行の障害になる危険もあります。そのために当初から装具を使用して歩行訓練を実施すべきだと主張し、車椅子の使用に強く反対する人もいます。しかし発病後1週間前後が経過して救命処置が終わり、ベッドで座ってもよい時期が来たら、車椅子に乗り移る方法と駆動する方法を覚えて離床することが望ましく、その手段として早期に車椅子を利用すべきだと私は考えて実行しています。

 装具とは障害のある手足につけてその機能を補うものをいいます。下肢(股関節から足までをいいます)につける装具は膝上までの長下肢装具と、膝下までの短下肢装具に分かれます。多くの場合に装具の役割を補助する手段として杖を使います。長下肢装具も短下肢装具も早期に歩行を実現する目的で訓練用に使い場合と、麻痺が回復しないために足の機能を補う目的で使用する場合とがあります。二つの目的で使われる装具に構造上の差はありません。

  


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