−もくじ−

  どこくらいの頻度で痴呆は起こるか?

  脳卒中による痴呆にはどんなタイプがあるか?

  症状は? どのようにして診断するか?

  なぜ痴呆になるのか?

  どんな治療をするのか?

  血管性痴呆の家族介護のポイント 


どんな治療をするのか?

兵庫県立姫路循環器病センター
高齢者脳機能治療室長 森 悦朗
(元 兵庫県立高齢者脳機能研究センター附属病院副院長)
 

○ 再発の予防

 血管性痴呆では脳血管障害の二次予防が最も重要であり、血管障害の危険因子に対する介入が本質的な治療です。高血圧、喫煙、心疾患、糖尿病などの脳卒中の危険因子に対して、適切な医学的対応が必要ですし、適度な運動や食生活の改善など養生も重要です。適宜アスピリンやチクロピジンなどの抗血小板薬、あるいは塞栓性の機序によるものではワルファリンによる抗凝固療法も適応となります。

 

○ 対症療法

 血管性痴呆のほとんどは、損傷部位によって痴呆の性質および神経症状は大きく異なります。これらの疾患における対症的治療も異なるところがあるはずですが、実状は原因疾患の如何によらず症候ごとにほぼ共通した治療が行われます。

(1)認知機能障害に対する治療

 数年前までは脳代謝改善剤あるいは脳循環改善剤と呼ばれる薬剤がたくさん存在し、脳卒中後の症状を緩和する目的で多く使われていました。しかしこれらの薬剤の効果に疑問がもたれて再調査が行われたところ、多くの薬剤は明らかな有効性を示すことができず、認可が取り消されました。現在塩酸ドネペジル(アリセプト)という薬剤が、アルツハイマー病の認知障害を改善させる薬剤として多く使用されています。つい最近欧米において行われた臨床試験で、ドネペジルは血管性痴呆においても有効であることが示されました。欧米では近く血管性痴呆の治療薬としても認可される可能性があります。日本でもいずれ臨床試験が行われ、効果が確かめられれば使用できるようになるかも知れません。この薬剤には嘔気、嘔吐、下痢、食欲不振、尿失禁などの副作用が比較的よくみられ、不整脈、胃潰瘍、喘息発作などの生命に関わる重篤なものもあり得ます。

(2)精神症状や行動異常に対する治療

 精神症状や行動異常は、それが患者自身にとって甚だしく不快となっているとき、患者自身や介護者などに危険を及ぼすことが危惧されるとき、あるいは介護者の大きな負担となっているときに問題となり治療の対象とされます。幻覚・妄想に対しては抗精神病薬、不安に対しては抗不安薬、抑うつに対しては抗うつ薬が有効です。無為・意欲低下に対してはアマンタジンが血管性痴呆の無為・意欲低下に有効な場合があります。これらの薬剤は認知機能や運動機能を低下させる作用も持っています。高齢者は副作用を生じやすく、また同時に複数の薬物を服用していたりするので、注意が必要です。抗精神病薬ではパーキンソニズムや過度の鎮静を来たし転倒や嚥下障害の危険が増すことがあります。抗不安薬や抗うつ薬では過度の鎮静や注意障害を起こし、認知機能のさらなる低下を来たし、譫妄の原因ともなります。また高齢者では尿閉や便秘、起立性低血圧など自律神経系の異常も生じやすく、特に抗うつ薬では注意する必要があります。

 

○ 服薬上の注意

 記憶障害などのため、あるいは疾病に対する理解の不足から服薬が不規則になりがちです。そのため効果が不十分になったり、逆に過量を摂取して副作用をまねいたりする危険性もあります。認知障害や痴呆がある場合、服薬は介護者の監視の元で的確に行うことをお薦めします。患者自身が薬物の副作用に気付かないことが多いので、介護者は何が起こり得て、どのような警告症状に気を付けるべきかについてよく説明してもらい、気をつけておくことが必要です。

  


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