|
−もくじ− □ 症状は? どのようにして診断するか?
症状は?
○ 痴呆の症状 様々な認知機能障害が生じます。例えば、記憶、見当識、注意、言語、道具の使用、思考や判断などが障害されます。一般的にはこれらの認知機能のうち2つ以上の機能の障害が痴呆の診断には必要とされます。中でも記憶障害の存在は重要な要素です。そのような認知機能障害は慢性・持続性で、通常は進行性です。 また日常生活に支障が生じる程度の認知機能障害を呈してはじめて痴呆と診断されます。認知障害の他に、情動の統制の障害や人格の障害を伴い、また多くの例で妄想や幻覚、せん妄、抑うつ、意欲・活動性の低下などの精神症状や徘徊、濫集などの行動異常を伴います。このような精神症状、行動異常によって日常生活に重大な支障をきたします。血管性痴呆では、大脳損傷の場所によって症状は様々ですが、左半球病変では、失語・失行・失読・失算・失書などがみられることが多く、右半球病変では、失認(半側空間無視・人物誤認など)・着衣失行・意欲低下等がみられることが多いようです。症状は大脳の損傷されている部位によって異なり、また脳卒中のタイプによるので一概に特徴をあげることはできませんが、一般にアルツハイマー病と比べて、記憶障害は比較的軽く、注意障害、自発性の低下、興味の喪失などが目立ちます。症状は動揺しながら階段状に進行していくことも特徴の一つです。夜間せん妄などもよくみられます。 神経症状として、片麻痺、知覚鈍麻、パーキンソン症状、構音障害、嚥下障害、歩行障害、尿失禁を伴うことがあります。感情失禁といって、些細なことで怒ったり、涙もろくなることもあります。 痴呆における記憶障害は、事実や経験を忘れることであり、例えば「さっきのことを忘れる」「最近の出来事の記憶があやふや」「置場所を忘れて物をなくす」といった形をとります。また自分の障害の正確な程度を理解できないという症状(病識の低下)を伴うことが多く、物忘れを否定することや物忘れを過小評価することがしばしばあります。これに対して「物や人の名前がとっさに思い出せない」「(使い慣れた)器具や道具の使い方を忘れている」「料理や家事のやり方を忘れて下手になった」といった類の訴えは、学習され知識や技能として蓄えられた能力の障害を疑わせるものですから、言語や行動の症状に分類し、いわゆる失語失行失認などを疑って検討を進めることになります。さらに「幻覚が見える・聞こえる」「妄想的なものの言いよう」「怒りっぽくなった」などの精神症状の訴えも痴呆ではしばしばみられます。
○ 痴呆と紛らわしい認知機能の障害 一方、大脳の一部が冒されたことによる特定の認知機能の障害、例えば失語症、失行、失認、右半球症候群、前頭葉症候群などは医学的には痴呆と区別されますが、痴呆の部分症候でもあり、一見痴呆と紛らわしいものです。それぞれに適切な治療法がありますし、対処の仕方も異なります。また、せん妄は痴呆と混同されやすい病態です。せん妄の原因疾患として最も多いのは代謝障害ですが、右大脳半球の広範な損傷、後頭葉の損傷、前頭葉を冒す脳卒中の急性期にもしばしば生じてきます。急性期をすぎると注意障害は改善し、せん妄は消失するのが一般的です。脳卒中の後にうつになることは稀なことではありません。うつでは、気が滅入る、気分が沈む、何もかもうっとうしい、自信喪失、寂寥感などがみられ、悪化すると喜怒哀楽の感情が失われ、心の中が乾いたような状態になります。それととともに、物忘れがひどいように感じる、集中力が低下するなどの思考の障害や、日常の動きや行動量の減少、自分から他人に話しかけることが少なくなる、引きこもる、仕事をする意欲がでてこないなどの意欲低下、行動上の制止もみられ、痴呆のように見えることがあります。大脳の損傷がうつを引き起こす一方で、脳卒中という病気になったということ、あるいは麻痺などの障害を持ったというストレスがうつの引き金にもなります。左側の前頭葉が冒された場合にうつになりやすいとも言われています。
○ 検査 血液検査や尿検査、あるいは心電図や心臓超音波検査、胸部X線、頭部のCTやMRI、などを用いて、脳卒中の診断および危険因子の検索を行います。痴呆が疑われる場合はMRI やSPECTが大脳のどの部位がどの程度障害されているかを詳細に判断するのに特に役に立ちます。それ以外にさまざまな認知機能検査が用いられます。ミニメンタルステートテストや長谷川式痴呆スケールもそれに含まれますが、もっと詳細なものは多くの場合、臨床心理士や言語療法士が行います。これらの検査の結果も参考にして痴呆やその他の認知障害を診断します。 |