うつ

 

−もくじ−

  なぜうつになるのか

 ■ 頻度と発症時期

  症状と早期発見のための方法

 ■ 治療方法とその効果

  新世代の抗うつ薬 ―そのメリットと注意点―

  家族が注意すべきこと


家族が注意すべきこと

島根医科大学第3内科 
小黒 浩明
 

 脳卒中発症後にうつ状態となった患者さんは引っ込み思案で無気力となり、不安も強く、リハビリ治療に大きな障害となります。しかし、早期に診断され適切な治療が行われたならば、若い人での一般的なうつ病(内因性うつ病)に比べて症状は軽く、決して経過は悪くないとされています。

 うつの程度は病気になる前のその人のもともとの性格や環境によって大きく左右されるとされており、ご家族の影響も少なくないと思われます。一つは、ご家族の患者さんに対する否定的な感情表現が患者さんのうつ状態の経過に大いに関連すると言われています。具体的には、ご家族が患者さんに対して感情的な態度をとったり、批判したり、逆に過保護になったり、家族が犠牲になっていることを主張したりすることなどがあります。ある研究では、患者さんに対して批判的な言葉を一日に2個以上言ってしまった家族では9ヶ月の間にうつの再発率が67%であったのに対し、2個未満に抑えることができた家族のそれは22%だったそうです。家族の批判的な言葉の多さがうつの再発、悪化の大きな原因となることが予想されます。ご家族が、患者さん本人の示すうつ状態を病気でないとしたり、それを怠けているとか性格の問題としてしまったりすると、病状の経過に悪い影響を及ぼす恐れがあります。また、うつの男性患者さんの病状経過と、その妻の性格とに関連があるという報告もあります。妻が女性的で、患者である夫を頼りにし、うつ症状に対して一緒に悩み考えられる(タイプ1)、母性に富み、夫を保護しようとし、夫の症状を冷静に受け止める(タイプ2)、男性的で、家庭を支配し、夫に積極的に干渉したがり、叱咤激励する(タイプ3)、夫との距離を遠く置いて、あえて情緒的に交流しようとせず拒絶的(タイプ4)と5つに分類したそうです。するとタイプ1が最も病気の経過が良好で、タイプ2から3になるにつれ経過が悪くなり、また妻がはじめからタイプ3や4であるよりも、病気の経過中に1から2、3、4と変化していくほうが、うつが悪化しやすいということでした。

 これらのことより、ご家族はあえて患者さんからの感情的な言葉や行動を避けようとするのではなくて、お互いにかかえている問題を支えあい自由に話し合って、肯定的な雰囲気のコミュニケーション(「よい」「できる」)へ変えていくことが、うつ病の再発や悪化を減らす治療につながると考えられます。実際の例として、起床がつらくて遅くまで寝ている患者さんに対し、「朝遅くまで寝ているのはとても頭にくる」という批判する調子は避けて、「適切な時間に起きてくれることはとてもうれしい」という具合に何かをして欲しいと望む姿勢で接し、患者さんの行動により家族がどのように感じるか正確に伝えていきます。実際の治療には患者さんと主治医以外に、ご家族も加わって面接に臨み、実際の日常の場面や会話を再現しながら練習していくことも効果があると言われています。必ず治る病気であること、充分な休養が必要であることを家族として認識して頂き、家族も治療に加わっていくという気持ちを持つことも大切です。家庭での日々の取り組みを続けながら、患者さんとご家族の間により暖かい気持ちの交流が芽生えたならば、とても好ましい結果に至ると思われます。しかし、うつ病患者さんのご家族の精神的負担はかなり大きなものがあり、40%以上のご家族が治療を必要としうるほどの精神状態であるという報告もありまして、患者さんから受ける依存や攻撃の対象になってしまうご家族の負担の大きさも重要であります。この点に関しては治療に携わる私達も充分留意していく必要がありまして、万が一ご家族自身に精神的な不調を感じた場合には早めに主治医に御相談されることがよろしいかと思っております。

  


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