うつ

 

−もくじ−

  なぜうつになるのか

 ■ 頻度と発症時期

  症状と早期発見のための方法

 □ 治療方法とその効果

  新世代の抗うつ薬 ―そのメリットと注意点―

  家族が注意すべきこと


治療方法とその効果

島根医科大学第3内科 
高橋 一夫

 脳卒中後のうつ状態の治療方法には認知療法、磁気刺激療法、音楽療法なども提唱されていますが、通常、一般的に行われるのは薬物療法です。脳卒中後のうつに対する薬物療法では、抗うつ薬、抗不安薬、脳循環代謝改善薬、漢方薬などがあります。また、脳梗塞の悪化や再発によりうつ症状も悪化することもありますので、脳梗塞伸展予防の治療を平行して行います。うつ症状に対して、中心となる薬剤は抗うつ薬です。脳卒中後のうつ状態は、通常のうつ病とは異なり、脳卒中による脳の障害がうつ状態の発症に関与しています。そして、うつに対する脳卒中の関与が強いほど、通常のうつとは抗うつ薬に対する治療反応や臨床経過が異なってくるため、通常のうつとは異なった抗うつ薬の使用法が必要となってきます。具体的にどのような違いがあるかといいますと、通常のうつに比べ、脳卒中によるうつのほうが抗うつ薬の効果がやや効きにくい傾向にあり、また副作用も生じやすいことが知られています。また、脳卒中による脳への障害が大きいかたほど抗うつ薬が効きにくく、副作用が多くなります。脳卒中後のうつ状態の患者さんが抗うつ薬を服用するとき注意しなければならない副作用としては、抗うつ薬を飲んだために、かえって精神状態が悪化し、うろうろ歩き回ったり、自分がどこにいるのか判らなくなったりする状態、専門用語ではせん妄状態といいますが、を生じたり、からだが硬くなり、小刻みな歩行になったりするパーキンソン症候群が生じることが知られています。また、口渇、排尿障害、便秘なども副作用としてあります。また、通常のうつには抗不安薬も併用して使用されることが多いですが、このような薬も筋弛緩作用があり、高齢者や脳卒中によって脳が障害されている患者ではふらつきや転倒、せん妄などの原因になることがあります。しかし、副作用があるからといって、薬を飲まなければ、治るものも治らなくなってしまいますので、脳卒中後のうつ状態の患者ではこれらの薬の中でも比較的作用の弱いものを、少量から使うことが原則となります。脳卒中後のうつ状態の患者の多くは、軽度から中等度のうつであり、このような場合は、薬物療法で、時間はかかりますが多くの症例は改善傾向を示します。うつの程度が強い場合は、自殺や食欲低下からくる栄養障害などの可能性もありますので、必ず精神科受診をし、より専門的な治療が必要となってきます。

 脳卒中後のうつに対しては、もちろん、家庭や社会のバックアップや、医師も漫然と薬を投与するだけでなく、患者本人への病状の正確な説明や希望を与えるような診療を行っていくことも大切です。

 


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