うつ

 

−もくじ−

  なぜうつになるのか

 ■ 頻度と発症時期

  症状と早期発見のための方法

 ■ 治療方法とその効果

  新世代の抗うつ薬 ―そのメリットと注意点―

  家族が注意すべきこと


症状と早期発見のための方法

大田市立病院 院長、神経内科 
岡田 和悟

<はじめに>

 脳卒中後のうつ状態は、年齢に関わらず、発症後の急性期から2年目までに起こることが多いとされ、患者さん御本人の苦痛や苦悩を伴うだけでなく、その生活の質(QOL)を障害し、家族にとってもご心配や負担を増す原因にもなり、その早期の発見と対処が必要な病状です。ここではうつ状態の症状を中心に述べ、早期発見の対策について解説します。

<症状について>

 脳卒中後のうつ状態の初期症状として比較的よく見られるものは、頭痛、めまい、しびれ、不眠、倦怠感などの自覚症状の出現です。典型的には、脳卒中から1ヶ月を過ぎ、片麻痺などの神経症状が次第に安定期に入り、家庭や職場に復帰し、あるいはリハビリをしだしてしばらくしてから起こってきます。患者さん本人が上記のことを訴えられたり、家族の方が自宅や仕事場での日常生活で、趣味に対する興味や活動性が減って何となく元気がないことやこれまで行えていた仕事や作業が捗らず手に付かない状態に気づかれます。患者さん本人との話の中では、不安感や集中力低下を認め、進行例では「何をするにもおっくうで考えがまとまらない」と訴え、重症の場合は抑うつ気分(憂うつで落ち込んだ気分、悲哀感)や興味、喜びの低下がみられたり、無表情でボッーとしている状態となる場合もあります。しかし、内因性のうつ病と違い、罪悪感や自殺を考えることは少なく、一日のうちでの変動は殆どないとされています。危険因子として報告されているものに、これまでにうつ病にかかったことや血縁の家族にうつ病の方がおられた場合、男女別では女性で多い傾向があるとされています。脳卒中の病変の場所としては、左の前方に病変のある方がうつ状態になりやすいことが有名です。この場所では、右片麻痺や失語症を示す場合が多くみられます。さらに日本人に多い脳の深部に多発する小さな梗塞により仮性球麻痺といって物言いが悪くなったり、飲み込みが悪くなる症状を示す場合や小刻み歩行やすくみ足を特徴とするパーキンソン症候群などとの関連が指摘されています。

<区別する必要のある病気>

 うつ状態とぜひ区別しなければならない病気に、せん妄といわれる軽度の意識障害があります。特に高齢者で、肺炎や脱水症などの全身状態の変化や手術などを契機として、比較的急激に夜間の不穏、興奮、妄想、幻覚などの症状がみられたり、あるいは一日中元気や意欲がなくもうろうとした状態となる場合、病院に受診して検査を受けることが必要です。また高血圧や胃の薬、精神安定剤などで同様の症状をきたすものがあるので服用している薬の確認も必要です。アルツハイマー型痴呆との鑑別は、痴呆が徐々に発症し、時間や場所の記憶や先程のことを忘れる短期記憶障害が主症状であるのに対し、うつ状態ではこれらの障害は原則みられません。しかし、うつ状態が先行する血管性痴呆の病態もあるため、うつ状態の早期の発見と対処が必要です。

<早期発見について>

 脳卒中後のうつ状態の起こりやすい時期と症状の所で述べた自覚症状や患者さんの変化を早期にとらえて、主治医と相談することが重要です。また誘因となりうる環境変化や家族の死亡、独居、家庭や職場でのストレスの有無を確認することも参考になります。これらの点でうつ状態かもしれないと感じたら、診療でも用いられる自己記入式のスクリーニングテストを行ってみるのも一つの方法です。表にある質問の各項目の合計点で40点以上あればうつ状態を疑い、50点以上では大うつ病の疑いがあるとされています。

<おわりに>

 脳血管障害に伴ううつ状態は、発症時期や危険因子を念頭において、その存在を疑い、スクリーニング検査を行って、早期に対策をたてることが重要です。

 


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