うつ

 

−もくじ−

  なぜうつになるのか

 □ 頻度と発症時期

  症状と早期発見のための方法

 ■ 治療方法とその効果

  新世代の抗うつ薬 ―そのメリットと注意点―

  家族が注意すべきこと


頻度と発症時期

島根医科大学
地域医学共同研究センター
山下 一也

1. 脳卒中後のうつの頻度

 脳卒中後に生じる様々な精神症状のうち、うつは比較的頻度が高いものです。表1に脳卒中後のうつの頻度を示します。報告者によりかなり幅があり、脳卒中後15〜72%の患者にうつが出現するとされております。このように、報告者によってかなりの開きがある理由としては、対象患者が入院患者か外来患者か、罹病期間、病変部位、評価方法、評価基準、家族との関係、その他の社会環境などにより左右されるとされています。

 たとえば、対象が外来患者の場合では、重度うつ病が21%、軽度うつ病が17%で、平均32%、入院中の患者の場合では、重度うつ病が22%、軽度うつ病が17%で、平均34%がうつになっていたとの報告がありますが、リハビリテーション病院の患者を対象にしますと、重度うつ病が23%、軽度うつ病が35%で、平均46%がうつになっていたとされ、対象の違いによりうつの頻度が異なるのがお分かりいただけると思います。しかし、いずれにせよ、脳卒中後のうつの頻度は高く、脳卒中後のうつへの認識を高める必要性があります。

 ところで、以前は脳卒中後のうつの対象は脳梗塞、脳出血、くも膜下出血でしたが、最近では、MRI検査によって無症候性脳梗塞でもうつが発症することがいわれています。逆に、初老期発症のうつの約半数、老年期発症のうつの大多数に無症候性脳梗塞が認められるとの報告もなされています。

 

2. 脳卒中後のうつの発症時期

 脳卒中後のうつの発症時期とうつについて、経時的に追跡した報告を表2に示します。こららの報告によりますと、脳卒中発症後3〜6ヶ月でうつの頻度や程度が最も高くなり、その後は一度減少し、再び増加することがわかります。

 この理由として、脳卒中発症後3〜6ヶ月のうつについては、脳の病巣部位のような器質的要因が強く、その後の慢性期でのうつは脳卒中後遺症に対する心因が関連すると考えられています。すなわち、脳卒中発症当初にみられたうつとその後のうつとでは発症機序が異なる可能性が考えられます。

 また、うつ状態の持続期間については、発症後3週目または6ヶ月後にうつを示した患者の半分以上は、1年後もうつが継続していたとされています。

  脳卒中発症後に重度のうつを呈する患者では、軽度〜中等度のうつやうつが認められない患者に比べて、認知機能が低下していたとの報告があります。また、脳卒中発症後にうつを呈する患者では、1年後、2年後の生存率も低下するとの報告もなされています。逆に、うつから回復した患者では、日常生活動作についても大幅な回復を示し、うつが持続した患者よりも生存期間が長いといわれています。したがって、脳卒中後のうつについて早期の治療が必要だということがお分かりいただけると思います。


表1 脳卒中後のうつの頻度

報告者

報告年

例数

頻度

雨宮

1975

100

15

Robinson

1982

103

29

Wade

1987

79

30

山口

1987

99

35

長江

1990

636

46

Shubert

1992

18

72

Anderson

1994

285

21

Burvill

1995

294

23

Pohjasvaara

1998

277

40

表2 脳卒中後のうつの発症時期(平井、2001、一部改変)

Robinsonら(1982)

発症後2年以内にうつが多く、特に6ヶ月までうつが増加。

Damら(1989)

発症後181〜360日の期間でうつ点数が最も高い。

長江ら(1990)

発症後4〜6ヶ月の期間でうつ点数が最も高い。

Astromら(1993)

発症3ヶ月で頻度が最も高く、1年で低下し、2,3年で再び増加。

Castilloら(1995)

発症3〜6ヶ月で頻度が高くなり、1年で低下し、2年で再び増加。

 


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