−もくじ−

  概論・薬物療法

  脳神経外科的治療

  漢方医学からのアプローチ

  リハビリテーションの観点から


漢方医学からのアプローチ

医療法人ときわ会ときわ会病院 理事長 永山 隆造

 脳卒中については、約二千年前の中国で作られた「黄帝内経」という医学書の中にも書かれています。そこでは脳卒中になることを「中風」になると言い、また片麻痺を「偏枯」と呼んでいました。随・唐の時代に高度に発達をした漢方医学は脳卒中に対する多くの治療法を行ってきました。漢方医学の治療法はおおざっぱに、漢方薬・鍼灸・按摩(指圧)の3つに分けられます。ここでは脳卒中後の痛みと痺れに対する漢方医学の概略を簡単にご紹介しますが、最初に痛みに対する漢方医学の考え方をお話しましょう。

 漢方医学では、病気になると体のどこかで血液や体液の循環がとどこおり痛みや痺れが起きると考えています。また漢方医学では、同じ痛みでも患者さんの体格・体質・強弱・熱がりや寒がり・便通などによってそれぞれ薬が違います。たとえば、AさんとBさんが片麻痺による痛みを訴えたとしても「エネルギーの余り過ぎているAさん」は、過剰なエネルギーのために血液や体液が鬱滞を起こして痛みが生じていると考え、余分なエネルギーを取り去る治療をします。反対に「エネルギーの不足している患者Bさん」は、エネルギーの不足により患部に十分な血液や体液が循環しないから痛みが生じると考えて、エネルギーを補う治療をします。ですから漢方医学では、体を正常な状態に戻して「痛み」や「痺れ」の治療を行うことを基本にしているのです。

 

(1)  漢方薬

 片麻痺の随伴症状としての頭痛や肩こりなどには体力が強い人には、「大柴胡湯」・「三黄瀉心湯」など、また四肢の痛みには「疎経活血湯」などがよく使われますが、これらの薬は体力の弱い人には出せません。顔面痛も多いものですが体力が比較的に有る人には「葛根湯」などが有効です。体力の無い人の頭痛や肩こりには「桂枝加附子湯」なども良いでしょう。手足の冷えや全身が寒い人には「当帰四逆加呉茱萸生姜湯」が使われます。腰から下の冷えや痛みには「八味地黄丸」や「苓姜朮甘湯」などがよく出されます。

 体質や症状に合わせた多くの種類の薬があります。これらの漢方薬の多くは、西洋薬と併用が可能です。漢方薬に精通した医師に処方していただくことをお勧めします。

 

(2) 鍼と灸

 鍼麻酔で知られるように、鍼には強い鎮痛効果があります。また鍼や灸には筋肉のこりをほぐす強い作用や、血液や体液の循環を良くする効果を持つことも科学的に証明されています。鍼や灸の治療にはそのほかにエネルギーを取り去ったり、補ったりする力もあります。言いかえると体のエネルギーの代謝を正常に戻す作用が有ります。先に述べた「黄帝内経」にも中風や偏枯に対する非常に高度な鍼灸の治療法が書かれていてます。最近では鍼に低周波電流を通した時に起こる筋肉の運動を利用して麻痺筋の力を強める治療も行われています。特に灸は家庭でも手軽に出来る方法もありますから覚えると重宝します。

 

(3) 按摩・指圧

 按摩や指圧は鍼灸と同じツボや経絡を使って治療をしますので、同様な効果があります。按摩や指圧についても家庭療法の本が出ています。それらを参考にして勉強をしながら自分自身やご家族の協力で毎日治療を続けることも非常に有効な方法です。

 

 以上簡単に漢方医学からのアプローチをご紹介しました。いずれの治療法も、その治療に精通した医師・鍼灸師・按摩(マッサージ)師にかかることが大事です。熟達した手によれば副作用の心配は皆無と言っても良いと思います。

 最近は医学部の学生に漢方薬や鍼灸、いわゆる漢方医学の講義を取り入れる大学も増えてきました。漢方医学の長所を役立てながら毎日のリハビリにお励み下さい。

  


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