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−もくじ− ■ 概論・薬物療法 □ 脳神経外科的治療 脳神経外科的治療
脳卒中を起こすと、数週間から数カ月して、「中枢性疼痛・痺れ」と呼ばれる異常な痛みや痺れがでてくることがあります。これは、健康な人が経験する痛みや痺れとはまったく違うもので一種独特の不快感や苦痛があります。患者さんは、他に適当な言葉が見付からないので、痛みや痺れと表現しているのです。ところが、健康な人々には想像がつかないため、医師にも家族にも軽視されていることがよくあります。 「中枢性疼痛・痺れ」は、手足や体の感覚を脳に伝える神経の束が、脳卒中によって途切れてしまうことによって発生します。ですから、手足や体から伝わってくるまともな感覚は、ひどく鈍くなっています。これが最大の特徴です。そうでなければ、別の種類の痛みや痺れである可能性も考える必要があります。 感覚が鈍くなっているのに、痛みや痺れを感ずるというのは、不思議だと思われるでしょう。簡単に言えば、まともな感覚が伝わって来ないので、脳が勝手に異常な感覚を作り出すようになり、それが不快感や苦痛を生むと考えればいいと思います。手足や体を「末梢」、脳を「中枢」と考えると、「末梢」に原因がある普通の痛みと違って、「中枢」に原因があるという意味で、「中枢性疼痛・痺れ」と呼ぶわけです。 「中枢性疼痛・痺れ」には、何もしていないのに絶えず感じられる痛みや痺れと、撫でたり、擦ったり、圧迫したりというような、普通なら痛いはずのない感覚が、そのとおりに感じられず、飛び上がるほど痛く感ずるものとがあります。風や服の縁が皮膚にあたっただけで痛みが走るので、患者さんは、寒くもないのに手袋や包帯をしていたりします。 「中枢性疼痛・痺れ」には、鎮痛薬など普通の痛みの治療はあまり効きません。脳に原因があるからです。そこで、脳の中の痛みを伝える神経の束を、手術で遮断する治療が試みられてきました。このような治療は暫くは効果があります。しかし、再発することが多いという問題もあります。「中枢性疼痛・痺れ」の原因を考えれば、これは当然と言えるでしょう。「中枢性疼痛・痺れ」の原因を、もう一度追加するだけだからです。 これに代わる治療として、神経刺激療法が利用されています。普通の痛みは、撫でたり、擦ったり、圧迫したりすると軽くなります。痛み以外の手足や体の感覚は、脳に痛みが伝えられるのを抑える働きをしているのです。この働きを、人工的に駆動させようというのが、神経刺激療法の原理です。手足の神経、脊髄、脳内あるいは脳の表面などの特定の部位に、小さな電極を入れる手術を行います。さらに、腕時計くらいの体内埋め込み型刺激装置を、胸やおなかの皮膚の下に埋めて、これを電極とつなぎます。手術が終われば、刺激装置は体の外からいつでも好きなように作動させることができます。 脳卒中後の「中枢性疼痛・痺れ」のある患者さんは、手足や体の感覚を伝える神経の束が、脳で途切れていますから、手足の神経や脊髄を刺激しても、あまり痛みを抑えることができません。それどころか、前に述べたように、こういう刺激でさえ痛いと感じられてしまいます。しかし、脳内あるいは脳の表面などの特定の部位を刺激すると、約半数くらいの患者さんに効果がみられます。 約半数くらいにしか効果がないと聞いて、がっかりされる方が多いのですが、これでも他の治療法の効果よりは良いのです。それくらい、「中枢性疼痛・痺れ」の治療は難しいのです。患者さんによっては、いろいろな薬剤が効くこともありますし、他にも電気痙攣療法など新しい治療法が工夫されていますので、いろいろな治療法を組み合わせて、根気よく療養する気持ちが大切です。 |