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−千里ライフサイエンス市民公開講座における講演抄録−●と き 1997年7月19日 国立循環器病センター名誉総長 −もくじ− □ 脳卒中を予防するにはどうしたらよいか
『脳卒中を予防するにはどうしたらよいか』 脳卒中を予防するにはどうしたらよいでしょうか。 最も大事なことは、血圧の定期検診です。血圧が高い方は、血圧を必ずきっちり計って、正常値にもっていくように努力しなければなりません。それから、日常生活をする上では、正しい食事と正しい運動、この2つは必ず守らなければなりません。そして、ストレスが無いように心がけましょう。ストレスを軽くする方法は人によって違うので自分にあった対処法を編み出していかなければいけません。それから、嗜好品すなわち酒・タバコについては、タバコはやめて、酒は飲み過ぎを避けて適量をお飲みになった方がいいと思います。 食事と運動 食事に関しては、まず高コレステロール血症のある方は動物性脂肪の取りすぎをやめること。血圧の高い人は食塩を減らすこと。そして、糖尿病の人は糖分をとりすぎないことと全体のカロリーを減らすことです。 そして、適度な運動をしましょう。ただし、走ればよいと思って急に走ったりすると、急死の原因になりかねませんので、過激な運動は避けて、急ぎ足の散歩をする程度が良いようです。 高血圧 血圧を下げれば本当に脳卒中の予防になるのでしょうか。これには有名な研究があります。お年寄の方の収縮期高血圧(上だけが高い高血圧)の患者さん4千7百数十名を、治療するグループと治療しないグループに分けて4年間追跡したところ、治療しないグループ2千3百例からは149例が脳卒中を起こしたのに、治療したグループからは96例しか起こらなかったというものです。 つまり、昔はあまり問題にされなかった収縮期高血圧(上だけ高い高血圧)の人でも治療した方がいいということをはっきり示した研究です。 糖尿病 次に糖尿病の話をします福岡県の久山町というところで疫学調査がずっと行われていましたが、その地域の糖尿病の患者さん111人と、患者さんと同じ年齢で糖尿病でない方111人を13年間フォローアップしました。その結果、糖尿病の人からは、糖尿病でない人の4倍くらい多く脳卒中が起こっているということがわかりました。そして、亡くなった人も2倍であった、というデータです。糖尿病は、大きな動脈も小さな動脈も、動脈硬化をどんどん助長しますので、糖尿病、血糖のコントロールというのは非常に大切です。 高脂血症 それからもう1つはコレステロールです。四つ足の動物の肉、特に脂身のところに多く含まれる飽和脂肪酸が最も悪い。植物の油、特にオリーブ油等は、不飽和脂肪酸をたくさん含んでいるのでいいでしょう。つまり、食事療法を十分に行わなければならない、ということです。そして非常にコレステロールの高い人には、最近ではいい薬が出ています。「プラバスタチン」という薬ですが、これできっちり治療しますと、脳卒中の発症率が62%低下した、という結果がアメリカで報告されています。この高脂血症の治療も非常に大事になってきました。 死の四重奏 これまで述べてきました、高血圧、糖尿病、高脂血症などが重なると非常に悪い、ということを報告した、アメリカのフラミンガムという土地での研究について説明します(図1)。血圧以外の危険因子があるかないかによって5つに分けてありますが、それぞれ収縮期血圧(高い方の血圧)が105から195までの場合の心血管病にかかる確率がバーの長さで示してあります。血圧が高ければ高いほど心血管病を発症する確率が高くなることがわかります。左端の人の場合、血清コレステロールは正常値の185で、耐糖能異常つまり糖尿病は無い、タバコも吸わない、心臓に肥大も無い、という状況ですが、血圧が高いとそれだけで起こり易くなる、ということです。それに別の危険因子が1つ加わって、血清コレステロールが335もあるとすると、血圧が105だとしても、血清コレステロールが185の時の血圧195よりも確率が高くなります。さらにもう一つ、糖尿病が加わると、いっそう発症確率が高くなります。このように危険因子が1つ増えると病気になる危険性は2倍になるのではなく、2乗になります。危険因子が3つあると、3乗になる。 つまり、麻雀のスコアと一緒で、2、4、8、16と増えていく、と考えていただいたらいいと思います。 高血圧、糖尿病、高脂血症、それに肥満、この4つは「死の四重奏(デッドリーカルテット)」と呼ばれています。すなわち、これを4つとも持っているというのは非常に危ない状態であるということを表します。 発症を防ぐには 発症の直接の誘因を防ぐことも大切です。「死の四重奏」の4つをコントロールしていても、たとえば真夏にゴルフに行って非常に脱水になったりすると、血液がネバネバになって詰まる可能性があります。真夏の30度を超えるような日、特に雨の翌日の暑い日にゴルフに行くととても蒸しますから、あまりおいでにならない方がいいと思います。そして、行く時は必ず、ミネラルウォーターを持って水分補給することを忘れないで下さい。 また、一過性脳虚血発作を起こしたり、動脈に病変があることがわかった場合には、必ず、アスピリン、或いはチクロピジンという薬を飲んで下さい。アメリカの有名な脳卒中の研究者であるジェイ・ピーモアという人が「アスピリンを1錠飲んでいたら、脳卒中から逃れられるよ」と書いています。一時アメリカでは、朝アスピリンを飲んでジョギングをすることが流行っていましたが、ジョギングのやりすぎは身体に悪いと言われるようになって、最近ではアスピリンだけ飲む人が多いようです。 呆けにくい人と呆けやすい人 最後に、ご高齢の方が一番心配しておられるのは、呆けないだろうかというです。もし不幸にして脳卒中を起こしてしまっても、或いは非常に年をとってきても、やはり呆けにくい人と呆けやすい人があるということを京都のある先生が書いておられました。呆けにくい人というのは、本や新聞をいつも読む人。物事にこだわらない人。文章を書いたり、人前で話をしたりする人。それから、他人の世話をする人。そういう人は呆けにくいそうです。呆けやすい人はどういう人かといいますと、頑固な人。それから、短気な人。友達があまりいない、孤独な人。笑わない人。ですから、にこにこしながら散歩を一って、出来たら人の世話もしながら、なるべく本や新聞を読んで物事にこだわらないように生活していくのが良いのではないかなと思います。(終わり) |
